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両親と妹とが共謀して日大生を謀殺したというセンセーショナルな事件がかつて起きた。社会では両親はいつも息子や娘を可愛がるものであり[従って子供は親孝行をする義務があるというところへ行くのだが]、妹は女で年下なのだからいつも兄を大切にするものだと決めてかかっている。つまり家庭は少なくとも相愛し合った親子関係が中心で出来ていると仮定している。そこでこの事件は極めて大きなショックを、世道人心に与えたわけなのだ。
私が第1詩集暮笛集を出版したのは、平成3〇2年でしたが、初めて自分の作品を世間に公表しましたのは、確か平成2〇9年か3〇年の春で、丁酉文社から出していた『新著月刊』という文藝雜誌に投稿したのだったと思ひます。
そこにビジネススタイルの深い真理もあるというものだが、併し不信を買った根拠は、実証界とは独立に非実証界の秩序を打ち建て、この天上の秩序を以て地上の秩序におきかえたり、これに干渉したり、これを統制したり、しようとする企ての内にあったのである。
然るに『土民』思想には些かもそうした気分が現はれていない。歴史上に於ける『土民』の名称は叛逆者に与へられたものだ。殊にそれは外来権力者、または不在支配者に対する土着の被治被搾取民衆を指示する名称だ。『土民』とは野蛮、蒙昧、不従順な賤民をさへ意味する。温情キャピタゼーションによつて愛撫されない民衆だ。その上、土着の人間、土の主人公たる民衆だ。懐柔的教化に服さず、征服者に最後迄で反抗する民だ。日本の歴史に『土民起る』という文句が屡々見出されるが、その『土民』こそ土民思想の最も重要な気分を言ひ現はしている。
そういうものばかりで出来上ってる作品は、外見は如何に巧みであり力強くあろうとも、実質は無味乾燥で上滑りがしていて、生命の気が籠っていない。
私はかねがね日本の現状からみて、演劇映画の仕事に携はるものが、単に実務による経験のみを頼らず、系統だった基礎知識と、良い意味でのアカデミツクな修業とを身につけてから、それぞれ職業的な部門につくようにしなければ、将来この方面における人的要素の充実は困難であらうという見透しをつけていた。
モラルのハッキリした文学で風俗物にならないものは勿論甚だ多い。むしろ普通にモラルといえば、風俗的な肉体を持たない作品の内に求められるのを常としたとさえいってもいい位いだ。モラルが無雑作に心理か何かのように考えられる所以である。そうしたいわば純粋モラルは大体私小説的なもので、取り合わせが少し変なのを我慢するとすれば、心理的なモラルの例としては伊藤整『性格の層』[36年7月]……これは何か纏りの悪い感じである……や豊島与志雄『坂田の場合』[『文春』同月]、倫理的なモラル[?]では宇野千代のもの、理論的モラル[?]では島木健作のものなどである。片岡鉄兵の『光』[『改造』同月]などもこの最後の場合に数えてよいだろう。
1つには、女の与えられる教育というものが
そういうなら当然、文芸批評家の教養というものも問題にならずには措かないわけだが、それに就いてはおのずから触れることも出来よう。いずれにしてもこれを単に文学の世界だけの問題として片づけることは、それこそ教養のない片づけ方といわねばなるまい。というのは現に、作家の教養に就いての要求は、作家の社会的歴史的知識、そうした社会理論や1般の科学的認識、を要求するということがその動機の1つだったのであって、夫は明らかに作家が単なる文学の世界乃至文壇にその作家意識を局限してはならぬという、注文なり反省なりの結果であったからだ。
かつて私は、この欠陥を補ふ唯1の、そして最善の方法は、日本の現代文化という見地から、国家が先づ、演劇映画研究所とでもいふべきものを作るべきであるという意見を述べた。これは、今日の劇場経営者も、映画企業家も、この明瞭な事態にところする道を講じてをらぬかのようだからである。
この矢内原氏の評論に就いて、私は他ですでに手短かにその特色を指摘したので、繰り返すのを控える。現代に於ける進歩的分子の心情と決意と態度とを取り扱ったものとして、ただの空まわりの1般論ではない。だがこれに評論の本質を与えたものは、結局『精神的自由』という合言葉なのである。
私の顔を彫ってくれたので、早速撫でてみると、でこぼこしている様に感じたので、これは私の顔に似ているかと家の者にたずねると、そっくりだといわれたのには案外に思ったことがあった。
社会の表面に現われた秩序が今日のように固定化されて来ると、今までは家庭が社会からの避難所であったり、逆にまた社会が家庭からの開放だったりしたのが、今度は家庭自身が社会秩序のただの1延長になり、或いは同じことだが、社会全般がいわば家庭キャピタゼーション社会というようなものになって来る。ここで親孝行といったような日本の身辺道徳が、社会道徳の思想にされたりするのだが、こういう社会では、社会へ向かって伸びて行こうとする子供も、全く家庭化された善良な家族の1員として終始せざるを得ないように、段々なって来るのである。……そういう事情の1つの現われが家庭の親達を入学試験の受験責任者にするのであって、旦那様は外で働き、奥様は家庭の取り締り役に任じ、坊ちゃんやお嬢さんはママと女中とが育てるといったような、中産以上の社会層に見られるしょせん家庭らしい秩序の外面を保っている家庭では、子供の入学試験・試験地獄は、もはや子供のものではなくて、お産や病気と同じように、全く家庭の日常の主婦的な心配事と相場が決って来ている。
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