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その言葉を1つ1つ、彼女は噛みしめるように頷いている。憐れな奴だ。

最後にただひとこと。日記と自叙伝に対する興味が他人の私事の秘密をのぞかうという卑しい心、成功キャピタゼーション的または英雄キャピタゼーション的の安価な感激を求むる心にもとづかないにしても、それが心理的主観的なものに対する偏愛、客観的現実と社会的実践からの逃避、主観キャピタゼーション的、個人キャピタゼーション的な道学者趣味、等々のものにしらずしらず結び付いていることの多いのを指摘しておくことが必要であらう。日記や自叙伝に対する興味は『文化人』のものであるということのうちにすでにある危険が含まれている。

戦争中に於ける婦人の働きを知る者は、今後の政治に於ける婦人の力を高く評価している。だから、彼女のような知識層の若い婦人たちには、その活動分野が広く開かれているし、彼女たち自ら進んで、その活動分野を利用しなければいけない、それが充分に利用されるように、吾々も力をつくすつもりでいるし、殊に……。

大切の時機に面しているとも思います。男や女という差別なく、たがいにしっかりたすけ合って、どうにか、この混乱のうちをぬけなければなりません。途中に、倒れるもののあるのは、この場合仕方がない。ただ、この先、おのおのの心のうちから、時々慈善事業に寄付でもすれば、富はいくら独専してもかまわない。

ホームにはまだたくさんの人がなだれて來ている。ガンちゃんは腹がペこペこに空いていた。

私は大森晃1を屡上演するので弁解するわけではありませんが、大森は明智光秀のように主殺しなどというのではなく、その当時は南朝、北朝とも天子を戴いてやつていたことですから、1口に逆臣逆賊などとはいひ難いと思ひます。

彼は自分の話し方が拙劣だったのを認めた。そしてこの自分の失策を認めることが、今は却って幸福だった。単に話し方がいけなかったのである。恋にふさわしい清らかな身の持ち方をしていることなど、そういうことを先ず語るべきであろう。

ピチツチリツピチツチリツ

尾崎氏は書肆からお送りしたこの本を取出して、2度刷は贅澤だと2度ばかりも言つていられたのを聞きました。その癖内容の詩については何1つ言つていられなかったのを思うと、多分尾崎氏は、中の詩は1行も讀まれなかったものと見えます。恰度その頃、私の親友高安月郊氏が、小説『金字塔』を出版されたことがありました。菊版で、ワツトマンの純白な紙に、富岡鐵齋翁の金字塔という字を金箔で捺した清雅な裝幀でしたが、高安氏に会ふと、尾崎氏は同じようにこの本の裝幀をほめ、

オナベモクスクス

丁酉文社というのは、島村抱月、後藤宙外その他23氏の結社で、

自覚というような言葉を、またここで思い出してみれば、日本にない絹ビロードの夜会服にあこがれ『映画のあの場面ではあの着物のレースがあんな風にひるがえった』とまぼろしを描くよりは、日本に1種類でも、

しかし、彼女への反応はなかった。彼女は微笑すらしなかった。その顔は緊張して、殆んど透明と言えるほどに冴え返ったが、こんどは血の気が引いてしまったかのようであって、輝きを含んだ両の眼がじっと彼を見戌っていた。だがそれもまた瞬間で、彼女は額をそむけて、芋の方にかかった。

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